なんでもやり始めが楽しい。
音楽もふと思い立って作り出す時はワクワクする。
ぬか漬けも最初は混ぜるだけで楽しいし、どうすれば美味しくなるのかいつの間にかどんどん調べてしまう。
糠そのものや塩、水のおすすめはもちろん、風味付けにこれを少し入れると良い、と様々な隠し味なるものが色んなサイトで紹介されている。
実山椒や柿の皮、粉からし、ビールなどなど。
酸味が抑えられたり、味に深みが出たり、当然入れる物によって効果は様々。
ちょっとでも良いことが書いてあるとなんでも入れたくなるものだけど、僕はまだ家に物があっても、基本の味を知ってから、と調子付いて全然入れていない。
1つ、あまりの禁断のアイテム感に目を奪われた物がある。
「ビオフェルミン」だ。
ぬか漬けは野菜を漬けることで生み出される植物性乳酸菌を利用している。
少し経つと酵母も姿を表したり色んな菌がぬか床にうごめく事になるが、何よりも乳酸菌が鍵となる。
そこで、直接乳酸菌っぽい奴を入れちゃえ、と言いだす人が出てきてもたしかに何も不思議では無い。
そこでビオフェルミンというわけ。
家にあったそいつの成分を見ると、ビフィスズ菌末、フェーカリス菌末、アシドフィルス菌末、と書いてある。
正直、後ろのお二人は存じ上げない。
ただ、一人目のビフィスズ菌は馴染みのある感じ。
乳酸菌飲料やヨーグルトのパッケージでよくお目にかかる代表的な乳酸菌だろう。
ヨーグルトをぬか床に入れる人がいるらしいけれど、ふーんそういうことね、と納得。
3つ目の「アシドフィルス菌」ってのは名前からしてやばそうだ。
アシッド・ハウス、TB-303、電気グルーブ、、幻想的なぬか床。
思わず僕は8粒もの「新ビオフェルミンS錠」をぬか床に突っ込んでいた。
これは色々見ていると決して多くはない量。
伝統的な物と現代の技術が混ざりあって新しい世界をうむことはよくある。
なぜかこれからのぬか床に期待している自分がいる。
にしても、錠剤を入れるなんてやっちまったね。
しかし、どうなるのだろうと詳しく調べるとなんのことはない。
ビオフェルミンが含む乳酸菌は動物性の物で、植物性乳酸菌を利用するぬか漬けにはほんの気持ち程度には効果があるかもしれないけれど、菌がぬか床に定着するようなことはないそうだ。
基本通りじっくりと野菜を漬けて育てるのが結局一番という事。
一日後、ビオフェルミンはぬか床の水分を吸ってふにゃふにゃになり簡単に混ざり合った。
鼻を近づけると以前より香ばしい匂いがした気もするけど、数日経って多分完全に元通り。
僕の体に入って腸の調子を整えるよりは楽しかったかもしれない。
にしてもこんなにビオフェルミンの事を考えるなんて思いもしなかった。
数奇な運命を辿った8粒達、ありがとうね〜。